この一連の流れを受けて、ほぼ40歳の男性である私が生活について思うこと。シロクマさんはていねいな暮らし自体について語るのではなく、ていねいな暮らしと「おれら」の関係性について言及している。私はもう少し「ていねいな暮らし」自体に目を向けてみたい。
ていねいな暮らしとはストイックな暮らしである
「ていねいな暮らし」だけ聞くと、カラダや思想的にいいモノを身の回りに置き、部屋は片付いており、玄米とか食べている印象を受ける。そこから感じる印象は「余裕」であり、穏やかでゆったりした時間が流れていそうだ。
ただ実際にそういう生活をしようと思うと、身の回りのものを削ぎ落とし続けることが必要になる。これは、出したものは無意識レベルで元の場所に戻すことができ、不要なものについて常に断捨離を迫られる生活で、漫然と「ていねい」に憧れている人には手に入らない。筋トレを日常的にこなし、自身のコンディションの確認と維持を継続でき、日記なんかも毎日書けるような人のみが手に入れられるものだ。
余談だが、私の妻はていねいな暮らしを紹介する本を無造作にデスクに積み上げ、デスクの下には脱ぎ捨てられた靴下が抜け殻のように残されているタイプの人間である。ていねいな暮らしとは縁遠い。

ていねいな暮らしってなんだ?
もう少し「ていねいな暮らし」の解像度を上げてみると、「生活のプロセス全体を手触り感を持ってコントロールしている生活」なのではないか。
生活の中でわかりやすい「食事」をプロセスに噛み砕いてみると、「献立を考える」「食材を買ってくる」「調理する」「盛り付ける」「食べる」「片付ける」に分けられる。もう少し視野を広げると、「1週間分の献立を考える」「効率よく消費しきれる量の食材を買う」などとなるかもしれない。
生活を効率化のためにプロセス毎の分業に分けると、プロセス全体をていねいにコントロールすることは難しくなる。実際、今の私の生活はこんな感じだ。
- 献立は家事代行の人に提案してもらう
- 購入する食材の種類や量も家事代行からお知らせされる
- 調理も基本的に家事代行
- 作り置きがある間は、日々の料理はレンチンと盛り付けのみ
- 食器は食洗機に洗ってもらう
すなわち、私が直接関わるのは、「提示された食材をネットスーパーに発注すること」「作り置きをレンチンして盛り付けること」「食洗機から食器を出し入れすること」に限られる。結果的には健康的な食事を取れているが、私の関わり方は心がなくても機械的にできる動作まで落とし込まれている。
おそらくだけど、「ていねい」には、プロセス間のつながりを有機的に捉えることができ、八百屋でたまたま旬な食材を見つけたらその後の計画変更も自身の中で吸収できるような、生活の実感をともなうある種の大変さが要素として必要なんじゃないか。

ちゃんと生活をすると1日8時間労働は長すぎる
子供が産まれてから漠然と、常に時間がなくて、ていねいな暮らしとは縁遠いのは育児と仕事の両立が大変だからだ、と思っていた。でも少なくとも平日に限っては、意外と育児だけが理由ではない、と気づいたのは一人で別荘に泊まったとき。
18時頃にリモートで仕事を終えてから、車でスーパーに行って夕食の買い出しをし、食事を作り、後片付けをし、風呂に入り、日記を書き…という、「生活」をするだけであっという間に夜が更けていった。数日間の流れの中でどんな献立を作るか、そのためにどの食材をどれほど買うべきか、など考えていると、あっという間に時間が過ぎていた。きちんと生活をすると、1日8時間の労働をした後に残される時間では足りない。
今私が仕事と育児を両立できていると思っているのは、家事を徹底的にアウトソースした上で、自身の健康維持のための活動や、個人としての家族以外への価値提供は二の次にして成り立っている。家族に対しても価値提供できているのか、冷静に振り返ると怪しい。
これは余談だが、ていねいな暮らしっぽい写真を探していたら、どうしても靴下が脱ぎ捨てられた写真しか目に止まらなくなってしまった。

ていねいな暮らしの実現に向けて
どうやらていねいな暮らしには、ストイックさと、生活全体をコントロールできる時間が必要っぽい、ということが浮かび上がってくる。特に時間の要素を解決するにはFIREが手っ取り早いわけで、きっかけになった増田(アノニマスダイアリー = 匿名ダイアリー)の方におかれましては、暮らしのヒントを雑誌に求めるのではなく、まずは生活した上で、その各要素を自分なりに心地よくするにはどうしたらよいか考えるところから始めたら良いのでは、とお伝えしたい。やはりFIREは正義。
最後に宣伝ですが、私が1日8時間労働の大変さに気づいたきっかけになった、ちょっと不便で大変だけど、ていねいな暮らしへの気づきが得られるかもしれない、長野県の別荘をこの夏からAibnb経由で貸し出す予定です。ご興味ある方は何らかの方法で私までコンタクトください。


