おとうのオートノミー

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【読書メモ】キャズム2

まるで前職のベンチャー企業を見ているようだった。自社製品がPMFしたかな?と思ったベンチャー企業社員全員必読の書。

キャズムとは、アーリーアダプターとアーリーマジョリティとの間にある大きな溝のこと。本書では、アーリーアダプターとアーリーマジョリティは全く別物であり、その溝(キャズム)を超えるためには正しい現状認識と骨太の戦略が必要になる、と説く。

これは私の体験として、特に創業した会社で初めて製品が売れると、「これでプロダクトマーケットフィットした!」と舞い上がる。が、実はこれはアーリーアダプターに受け入れられただけで、アーリーマジョリティ以降に受け入れられない限りある程度以上に売上が伸びない。

本書によると、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの差は以下だ。

項目 アーリーアダプター以前 アーリーマジョリティ以降
導入目的 技術による課題解決ができるか試すこと 生産性向上
導入基準 自身による合理的判断 先行導入事例や同業者からの口コミ
技術的な課題に対する対応 ある程度自身で解決することを厭わない ホールプロダクトによるプロダクト側での解決を期待する

アーリーマジョリティを攻めるには、ノルマンディ上陸作戦になぞらえて、ある程度ニッチな市場を見極め、そこのユーザーが抱える課題を広範に解決するようなプロダクト(ホールプロダクト)により、一気にその市場を攻め落とす、という戦略が必要になる。他の市場を攻めるのは、一度特定の市場を攻め落とした後にする。このために、マルチな市場を攻めに行くことに期待される売上・利益より、一時的に下がることを認識しなければならない。

ホールプロダクトとはいうが、必ずしも広範な機能を自社製品が揃えている必要はなく、マーケットプレイスAPIを介した拡張性があることを示す。アーリーマジョリティを攻める段階では、自社製品のコア機能だけでは差別化にならないことが多く、製品としての尖り方は丸くなったとしても顧客にとっての使い勝手が悪いと見向きをしてもらえない。

本書はマーケティング向けの本らしいが、どちらかというとプロダクトマネージャーが読むべき本のように思う。特に技術出身の、「優れた技術があれば製品は広い顧客層から勝手に選ばれるはずだ」という思い込みがある方にこそ。

前職の経験を振り返ると、自社製品を軸に特定市場(しかもかなり大きな市場)を深堀りできる予兆があったのに、製品の位置づけを「あくまでマルチに使えるミドルウェアであり、必要機能の実装はSIer頼みである」としてしまったがゆえに、どの市場にリソースを集中したらよいかわからず、営業成績も目標に達せず、崩壊していったことがあった。本書になぞらえると、まさにキャズムの手前のアーリーアダプター、ないしはイノベーターから受け入れられたことをPMFと勘違いしていただけであった。

以上、メルカリで売れた本を発送する前に読み返したら意外と良い本だったから書いた読書レビューでした。