おとうのオートノミー

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日本の介護は「家庭内の優しい女性」の犠牲によって支えられている

この記事は、元々は私の義実家の家庭内介護の状況が気になって、下書きにしたまま寝かせておいたものです。そのため参照している統計が少し古いものになっています。しかし昨日、静岡県で73歳の男性が、要介護だった(?)妻と子供を刺殺し、自身も自殺するというショッキングなニュースがあったことなどもあり、リライトして公開します。

news.ntv.co.jp

要介護者の半分が家族内の女性に介護されている事実

内閣府による令和3年度版の高齢社会白書によると、要介護者の実に70%が家族や親族等に支えられている。このうち65%を女性が占める。つまり要介護者全体の約半分が、家族内の女性によって介護されている。事業者に支えられている要介護者は全体の12%にすぎない。

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介護者は身内の女性が多い(「令和3年版高齢社会白書」より抜粋)

ちなみに以下は「誰に介護を頼みたいか」を男女別にまとめたグラフだ。半数の男性が妻に面倒を見てもらいたい一方で、女性は外部サービス→子供の順になっており、性差が大きく出ている。また男女ともに、「介護サービスに依頼を希望する人の割合」>「実際に依頼している割合」となっている点もポイントだろう。

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誰に介護してもらいたいか(「令和3年版高齢社会白書」より抜粋)

義実家の場合

私の身近な例では、私の義実家が老々介護である。

義実家はとある地方都市にある。家族構成はこんな感じ。全員で同じ持ち家に住んでいる。

  • 70歳半ばの義父(健康、自動車運転免許あり)
  • 70歳半ばの義母(病気の後遺症で要介護)
  • 100歳強の義祖母(当然要介護)

つまり2名の要介護者(義母、義祖母)を、1名の動ける人(義父)で支えているという状況。現在、家族の移動、義母の介護、家族全員分の日常の家事などは義父が担当している。免許有無を書いたのは、買い物一つとっても自動車による移動が前提の、典型的な地方都市だから。

この記事を最初に下書きした数年前は、30代なかばの義妹(看護師)が一緒に住んでいて、介護や家事を手伝っていた。タイトルで言うところの「家庭内の優しい女性」である。しかし義妹もめでたく結婚して家を出た。最初は冗談で「俺が要介護になったらお前(義妹)に世話してもらうからな」などと言っていた義父も、徐々に義祖母を施設に預ける(数日のお泊り)などして介護サービスに頼る方法を探り始めている。

教訓

  • 多くの老人が家庭内介護になっており、その大半は家族の犠牲の上に成り立っている。
  • 家庭内介護から外部の介護サービスに移行するには、金銭面だけでなく、介護主体を「家庭内の優しい女性」から「老いていても良いから動ける人」に移行することが必要である。
  • 外部の介護サービスのお世話になることが家庭内の問題解決につながる例はまだ潜在的に多くあると思われる。一方で、それは社会保障に対する公的負担のさらなる増大を意味する。