先日、アメリカ出張の中で、イベント参加者との歓談の時間が設けられていた。というか、参加したイベント自体の目的が、ほぼ業界関係者の交流のためのものだった。英語の雑談、それもネイティブがマジョリティな場での交流って、英語の出張でも最も難易度の高い瞬間だ。僕も御多分に洩れず壁と一体化しかけたが、原因と対策を考えてなんとか最低限乗り切った。
まずはネイティブ白人との雑談の難しさの分析から。
言語の壁
単に英語という言語の壁があるだけではない。世の中には2種類の英語がある。すなわちInternatilnal EnglishとNative Englishだ。
International Englishとは国際言語としての英語で、そのマジョリティの話者は非英語圏の人である。比較的平易な良い回し、難しくても適切な専門用語から成り、それぞれのお国柄の訛りが見られるのもよくあること。何より彼ら彼女らは、非母語でコミュニケーションをとらざるを得ない難しさを乗り越えた人たちである。
それに対しNative Englishは、とにかく喋りが速く、独特なコロケーションを多用するため、仮に使っている単語自体が平易なものだとしても意味をつかみにくい。何より彼ら彼女らは、産まれてこの方自分が使っている言葉以外の言語で議論をしたことなどない。なので大半の人は「なんか下手だなーまどろっこしいなー」としか思えなくても無理はない。
従い、1on1ならまだこちらの拙い英語に耳を傾けてくれるが、ネイティブが複数人混ざるともうついていけなくなる。このNative Englishが第一の壁。
文化の壁
私の周りだけかもしれないが、東京人より大阪人の方が国際人になる確率が高い。理由は会話のスタイルにある。アメリカに限らず海外でウケる人って、会話の中で面白い小話を披露できる人だから。そもそもここが、僕のようなツッコミとあるあるネタで会話をする人にとってはなかなか難しい。
その上で、小話が受けるのはそれを面白いと思う共通の前提知識が必要となる。大体において共通の知識はないのでこれが難しくなる。これが第二の壁。結果、浅い文化の違いとか、共通の関心があるトピック、または自分が前提知識の説明も含めて話せる話題しか話せない。
何より面白くなかったり興味がない話題を聞くのって苦痛である。白人はこれをあからさまに態度に出してきたりすることもあり、そうすると結構きつい。
ビジネス面の壁
商談や何かしらの仕事がらみでこのような場に遭遇した場合、共通の話題は当該のビジネスの話題になる。最後の壁として立ちはだかるのが、日本市場の独特さだ。
極めて技術オリエンテッドな業界など、国ごとの差が現れないトピックなら良い。しかしビジネスサイドに寄れば寄るほど市場によって興味や切り口が異なる。で、少なくとも僕が相手にしている市場は、日本とそれ以外では極めて異なる特徴を持ち、それがゆえに日本市場の事情に興味がある人はそもそも日本に興味がある人しかいない。
打開策
ここまで壁について書いてきたが、これらの逆を意識することが打開策になる。
すなわち、
- サシで話す
- 共通のトピックのみ深掘りする
- 日本(市場)に近い人、興味がある人と話す
このあたりだ。
サシで話すのは、シンプルにネイティブ複数人に混じると会話についていけないから。一方で1on1なら、こちらが自信を持って話せば相手は聞いてくれる。サシだからこそ相手のバックグラウンドにも切り込める。総じて相手に対する興味をきちんと示すことができる。
共通のトピックは、出張なら出張の目的のトピック、すなわち仕事の話が良い。目先の業務の話だけでなく、方向性、チーム構成、働き方などいろいろな切り口から文化の違いや新たな着眼点を得ることができる。下手に笑いをとりに行こうとしなくとも良い。
日本に興味がある人とは、結局はアジア人になる。日本に地理的・文化的に近い人は、仕事の面でも我々と似た悩みを抱えている。地理的にも社会構成的にも、韓国の人とは分かり合えることが多かった。当然ながら非ネイティブなので言語的にも噛み合いやすい。国際的な場でアジア人だけで固まるのに抵抗があるかもしれない(もっと白人と話すべきなのではとか思ったりする)が、結局そっちの方が得られる気づきが多かったりするので開き直って良いのではないか。
要するに無理なものはその場で苦悩しても無理なので、やれることを全力でやろう、というスタンスで乗り切りました、というお話でした。